「累犯障害者」山本譲司

触法障害者たちのドキュメンタリー。
福祉の手が届かず、貧困や偏見の中、罪を犯さざるを得ない状況に陥っていく障害者達。刑期を終えて外に出ても、「中の方が居心地が良い」とまた戻っていく…。ニュースでも見た事がない(というか故意に隠された)話に思わず息を呑んだり悲しくなったり。
ただ、「塀の中にいたからみんなの気持ちは少しでも分かる」という著者の姿勢(じゃあ同じ体験をしていなければ相手の事が分からないのか、と思ってしまう)と、「生きている証しとしての性」という部分では多少主観が入っているような印象があったのがちょっと残念。確かに人間として必要なことだけれども、彼女たちが欲しているのは性欲の解消(この問題は「セックスボランティア」河合香織)に描かれている)ではなく、人間として扱われることだと思う。作業をさせたり一律に対応するのではなく、個々の個性に応じた福祉が…なんて遠い未来の話だろうか…。何はともあれ、誰もが知らなくてはならない、弱い障害者達を取り巻く現実の一角。ぜひ読んで欲しい1冊です。